猩々の幟(旗)

 酒壷の下に波が あるから、潯陽の辺で猩々が舞う姿であろうか。
画部分145cmx33cm 木綿 糊染

時代は江戸末から 明治

 

 

 

 猩々

これは唐かねきん 山の麓
揚子の里に高風と申す民にて候
扠も我親に孝あるにより
ある夜不思議の夢を見る
揚子の市に出でて酒を売るならば
富貴の身となるべしと
教えのままになすわざの

時去り時来りける にや
次第次第に富貴の身となりて候
思う事もなく又慮る事もなくして
その楽しみとうとうたり
忽然として酔いこじとして醒め
百般の憂いを忘れて千年の齢を延ぶ

またここに不思議 なる事の候
市毎に来り酒を飲む者の候が
盃の数は重なれども面色は
さらに変わらず候程に
あまりに不思議に存じ
名を尋ねて候えば海中に住む
猩々とかや申し候ほどに
今日は潯陽の江に出でて
かの猩々を待たばやと存じ候

潯陽のほとりにて 菊を湛えて夜もすがら
月のまえにも友待つや
また傾くる盃の影をたたえて待ち居たり
影をたたえて待ち居たり

みきときく名もこ とわりや秋風の
吹けども吹けども更に身には寒からじ
ことわりや白菊の
ことわりや白菊の
着せ綿を温めて酒をいざや汲もうよ
まれ人もごらんずらん
月星は隈もなし
所は潯陽の江の内の酒盛り
猩々舞を舞おうよ
葦の葉の笛を吹き
波の鼓のどうと打ち
声澄み渡る浦風に
秋の調べや残るらん

ありがたや御身心 素直なるにより
この壷に泉を湛え只今返し与うるなり

世もつきじ 世も つきじ
萬代までの竹の葉の酒
汲めども尽きず
飲めども変わらぬ秋の夜の盃
影も傾く
入江に枯れ立つ足元は
よろよろと
酔いに伏したる枕の夢の
醒むると思へば泉はそのまま
盡きせぬ宿こそめでたけれ


床の間は無いのですが、壁に 画をかけて見ると、凄く楽しそうな画で、前に座ると笑ってしまう
家にもピッタリと似合っています、骨董は出会いの時の直感ですね。

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